私がシステムトレードでロバストネスを大切にする3つの理由

投資・資産運用

昨今、株式市場ではAIや機械学習、ディープラーニングを用いた高度なアルゴリズムトレードが主流になりつつあります。最新の論文を読めば、複雑な数式や自然言語処理を用いた夢のような予測モデルが日々発表されています。

「市場は欲望と恐怖によって動いている」という言葉は、20世紀初頭に活躍した伝説的な相場師、ジェシー・リバモアのものですが、この欲望と恐怖こそがエッジ(優位性)を生む源泉として、数々のトレード技法やアルゴリズムが開発されてきたといっても過言ではないはずです。

では、感情を持たないAIが今後の金融市場でトレードをし始めるとどうなるのでしょうか?
「AIが市場を支配すれば、人間の恐怖や強欲といった感情は株価に反映されなくなり、市場は完全に効率化されるのではないか?」

これからシステムトレードを始める方や、既存の戦略を見直している方の中には、そんな疑問を持つ方も多いかもしれません。しかし、結論から述べると、私はシステムトレードを構築する上で最新の複雑なAIモデルよりも、昔からあるシンプルで「ロバスト(堅牢)なアルゴリズム」を何よりも大切にしています。

AI全盛の時代が到来しても、古典的なロジックが優位性を持ち続けると確信している3つの理由をお話しします。


1. 最終的に「電源を抜く(判断する)」のは人間である

どんなに優秀なAIが「ここは一時的な下落だから、数学的に買い向かうのが正解だ」と判断しても、ファンドに資金を出している顧客や経営層は生身の人間です。これはどれだけAIが進化しても絶対に変わりません。

想定外の暴落が起きた時、人間が恐怖に耐えきれず「今すぐシステムを止めて全ポジションを決済しろ!」と介入すれば、AIは非合理的な底値で株を投げ売りさせられます。つまり、AIの後ろに人間がいる限り、「恐怖による非合理的な売り」による市場の歪みは絶対に消えません。

また、大規模なファンドなどは、損失が出た場合に損切りすることがルールとして定められています。AIがいくらホールドだと指示しても、人間の判断によって損切りされてしまうのです。

2. 「人間のパニック」から「機械のパニック」への進化

AIが主流になると、多くのファンドが「似たようなデータ」を読み込ませた「似たような機械学習モデル」を使うようになります。これをアルゴリズムの同質化と呼びます。

その結果どうなるか。
何かの経済ショックが起きた際、無数のAIが一斉に同じタイミングで「売り」のシグナルを出し、過去に類を見ないスピードで暴落を引き起こします。最近頻発しているフラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)がその典型です。

市場から感情がなくなったのではなく、皮肉なことに、機械が支配することで「パニックがより高速化・極端化」しているのが現代の相場なのです。

3. 「AIの自滅」を拾うのは、常にシンプルなロジック

最新の複雑なAIモデル最大の弱点は「過学習(カーブフィッティング)」です。過去のデータに過剰に適合させているため、歴史にない出来事(未知のインフレ、パンデミック、新しい地政学リスクなど)が起きると、機能不全に陥って自滅します。

こうした「機械的なパニックやAIのバグ」によって価格が極端に歪んだ時こそ、我々のような個人投資家のチャンスです。

「どんなに異常な値動きをしても、長期的には必ず本来の価値(均衡点)に戻る」

この事実に基づいた、昔ながらのシンプルな「平均回帰」や「共和分」を用いたペアトレードなどのシステムが、複雑なAIが自滅してパニック売りした底値で、サヤを拾うことになります。

まとめ:温故知新のシステムトレード

AI時代においても市場から「恐怖と欲望」が消えることはありません。それは「流動性の瞬間的な枯渇」や「極端なオーバーシュート」という新しい形で市場に現れ続けると考えます。

相場環境がどう変化しても壊れない「温故知新のロバストなアルゴリズム」は、複雑化して自滅していくAIたちを横目に、今後も手堅く生き残る優位性を持ち続けるでしょう。

私がシステムトレードにおいて、複雑な聖杯探しではなく「ロバストネス(堅牢性)」を何よりも重視しているのは、こうした理由からです。時代が変わり、ツールがAIに進化しても、人間の本質と市場の原理原則は変わらないのです。

あなたはどのように考えられますか?

※これは個人の見解であり利益を保証するものではありません。投資は自己判断でお願いします。

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